動画投稿者「柚葉」が、動画サイトの人気のジャンル「ゆっくり茶番劇」の商標権を取得したことをツイッターで公表したことが大きな衝撃を呼んでいます。今後ゆっくり茶番劇の商標を使用する際は、商標使用許可申請書の提出と年間10万円の使用料が必要になると告示されています。
ゆっくり茶番劇事件のように商標登録されるともう打つ手はないのでしょうか?登録のメリットとデメリットについてまとめます

目次
商標登録されると打つ手はないの?裁判に負ける?
ゆっくり茶番劇のように、一旦商標登録されると、打つ手はないのでしょうか?
ゆっくり茶番劇が第三者に商標登録され炎上
ゆっくり茶番劇が第三者に商標登録され炎上しています。
https://twitter.com/Yuzuha_YouTube/status/1525607600250712064
投稿者各位 この度、当社は「ゆっくり茶番劇」商標権を取得いたしました。今後、当該商標をご利用頂く場合はライセンス契約が必要となる場合が御座います。柚葉 / Yuzuha【祝!ゆっくり茶番劇 商標登録】 (@Yuzuha_YouTube)
この記事を掲載したヤフコメには批判的なコメントが2733件、ツイッター上には、
#ゆっくり茶番劇商標登録に反対しますや、#ゆっくり茶番劇商標登録に抗議しますのハッシュタグが拡散するなど大きな反響を呼んでいます。
出願を代理した事務所には爆破予告まで来たとのことです。
裁判に負ける?
この商標登録を無効にするには、どのような手段があるのでしょう。
商標登録され、異議申立期間の2か月が過ぎた現在では、登録を無効とするためには、まず、特許庁に、商標登録無効審判を起こす必要があります。
ここで、無効が認められないとの審決が出た場合に、東京高裁に、審決取り消し訴訟を起こすことになります。これでも認められなければ、最高裁に上告することになります。
なお、商標登録無効審判を請求できるためには、請求者は「利害関係人」であることが要件となります。
すなわち商標権などの存在によって、法律上の利益や、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者をいい、まったく関係のない第3者が義憤に駆られて、無効審判を請求することはできません。
では、どんなケースが、商標登録無効審判で周知を理由に、取り消しなった事例を見てみましょう。
(1) 無効 2009-890005(4 条 1 項 15 号)
本件商標:ヨイチュー
第 30 類の「菓子及びパン」を指定商品として登録された本件商標に対し森永製菓により、無効審判が請求され,無効となった。
引用商標は「HICHEW」「HI-CHEW」「ハイチュウ」「ハイチュー」「ハイチュウ(ロゴ)」の 5 件である。
引用商標は 30 年以上にわたり使用されてきた事実があり,周知性が認められた。
(2) 無効 2012-890032(4 条 1 項 15 号)
本件商標:ボロニアジャパン(標準文字)
第 30 類の「菓子及びパン」,第 35 類の「菓子及びパンの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定商品・役務とする本件登録商標に対し無効審判が請求され,無効審決となった案件です。
周知の証拠として、引用された商標「BOLONIYA ╲ボロニヤ」(登録商標)については,証拠から平成 10 年当時の周知著名性と,平成 20 年以降の周知著名性が認められたのみならず,周知性が継続していたものと判断された。
したがって、周知により、無効というためには、出願時点(2021/9/13)で、文字商標「ゆっくり茶番劇」が、周知であった証拠を提出する必要があります。

調査において使用されている事例は見うけられましたが、周知商標(全国的に広く知られている)とはなっていないと判断したとしています。当時のインターネット検索でワードを限定して検索しても件数的には数万件程度であり周知とは言えないと判断したそうです。
筆者も、特許庁の公開データーベース、日本国周知・著名商標検索を調べてみましたが、「ゆっくり茶番劇」は0件となっていました。
審査官が、これで確認し、公開後の情報提供期間(4~6カ月)に情報提供がなく、登録後の2か月に異議申し立てもなければ、登録はやむを得ないという気はします。
代理人は、出願依頼人自身がYoutubeのチャンネルで使用したいと希望されていたため、出願の代理をしたが、単に周知商標を独占することで利益を得ようとしているのであれば不正の目的(商標法第4条第1項第19号)に該当する可能性はあり得ると記していました。
商標登録をするメリットとデメリット
メリット
・登録商標の独占的使用が認められ、他人の商標登録排除が可能になる。
・商標権の設定登録後に、他人に対する金銭的請求権を行使できる場合がある。
・現時点で他社の権利を侵害していなくても、将来、他社が自社と同一・類似の商標を登録することで権利侵害になってしまう可能性を排除できる。
デメリット
・金銭的コストがかかる(出願費用・維持費用など)
特許庁費用:約3万円(1区分5年間の権利期間の登録料を納付した場合)
特許事務所費用:約15万円
・手続と管理上の負担がある
出願、異議申し立て、無効審判、5年後まで。10年の権利期間を延長したい場合の手続き
基本的には、特許事務所が手続きを代行しますが、出願人、権利者としての負担がある。

ゆっくり茶番劇の第三者商標登録に関するSNSの反応


突然商標登録で美味しいところだけ持っていこうとするのは単純に気に入らないわ。

・ゆっくり界隈で殆ど名前が知られてない人物
・ゆっくり、東方とは無関係
・ZUN氏の耳には入っており、法律関係者と確認中
・所属事務所から警告処分
・特許庁のサイトが落ちる。
・反対署名が数時間で8千件を超える

だからゆっくりのイラスト使う事は問題無いし、タイトルが「ゆっくり解説」とかになってりゃ問題は無いわけだ。
まとめ
わかりやすくまとめると
- 商標登録を取り消すためには、まず特許庁に無効審判を請求する
- この場合、請求者が、利害関係人であり、出願時点で、この商標が周知であるとの証拠の提出や取得が不正の目的に該当することを証明する必要がある
- 商標登録について防衛的な意味でのメリットと費用や手間などのデメリットをまとめた

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