北京冬季五輪のパシュートの最後100mでの転倒で金メダルを逃した高木奈菜選手が、リベンジを誓うマススタートが19日に開催されます。
マススタートとはそのルールや意味、パシュートとの違いを詳しく見てゆきましょう。
平昌五輪でマススタート初代女王となった高木奈菜がどんな意地を見せるか注目です。

目次
マススタートとは意味は?
マススタートとは意味や特徴についてじっくり考えてゆきましょう。
massの意味
Mass(マス)には「集団」の意味があります。
マススタートの意味は、「集団が同時にスタートする」ということを指します。
シングルトラックでマラソンのように一斉にスタートし滑走する競技です。集団種目となるマススタートは、インナーレーンのさらに内側のウォームアップレーンも使用します。
スピードスケート競技の種目
北京五輪でのスピードスケート競技の種目は以下となっており、男女で多少の違いがあります。
短距離
500M / 1000M
中長距離
1500M / 3000M / 5000M /10000M
チームパシュート
マススタート
それぞれの競技に特徴があり、選手による得意不得意があります。
マススタートは、後に述べる競技の特徴からすると、長距離の持久力、短距離の瞬発力、両者が必要でオールラウンドプレーヤー向きと言えそうです。
マススタートのルールは?
多数の走者が一斉にスタートして16周でゴールの着順を競います。
4周目、8周目、12周目では通過順の1位、2位、3位それぞれ5ポイント、3ポイント、1ポイントが与えられ、ゴールでは60ポイント、40ポイント、20ポイントが与えられてその獲得ポイント合計で順位が決定します。
また、スタート直後の転倒事故を防止するため、ポジションを争う加速は禁止されています。
1周目は集団でゆっくり滑走し、2周目の合図から急加速が認められます。
転倒などで周回遅れとなった場合や、他の走者を妨害するなどした場合は失格となります。しかし、わずかな接触だけでは失格にはなりません。
世界距離別選手権(2020/2/16)での順位と、各周回でのポイントを見てみましょう。
順位 | 国・地域 | 選手名 | S1 | S2 | S3 | S4(ゴール) | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1位 | カナダ | イバニー・ブロンディン | 0 | 0 | 0 | 60 | 60 |
2位 | 韓国 | キム・ボルム | 0 | 0 | 0 | 40 | 40 |
3位 | オランダ | イレーネ・シャウテン | 0 | 0 | 0 | 20 | 20 |
4位 | 日本 | 高木菜那 | 0 | 0 | 0 | 10 | 10 |
5位 | イタリア | フランチェスカ・ロロブリジダ | 0 | 0 | 0 | 6 | 6 |
6位 | カナダ | ヴァレリー・マルタイス | 0 | 3 | 2 | 0 | 5 |
ここで、イバニー・ブロンディン(カナダ)が60ポイントで、1位、高木菜那は、10ポイントで4位となりました。二人を含む上位5選手はいずれも4周、8周、12周目では、1~3位に入っておらずすべて0ポイントです。
一方、ヴァレリー・マルタイス(カナダ)は、8周目で3ポイント、12周目で2ポイントを稼いでいます。しかし、16周目となるゴール(S4)では6位までに入っておらず0ポイントで、合計5ポイントとなり、ゴールで上位に来た5選手の後塵を拝しました。
つまり、16周目のゴールの順位が圧倒的に大きなポイントをしめることになります。

パシュートとの違いはあるの?
両競技の違いを表にまとめました。
マススタート | チーム パシュート | |
---|---|---|
種目 | 個人種目 | 団体種目(3人が1チーム) |
スタート | 多数の走者が一斉に | 2チームが同時に |
使用レーン | インナーレーン | インナーレーンのみ |
ウォームアップレーン | ||
周回数(400mリンク) | 16周 | 男子8周、女子6周 |
勝敗 | 4周目、8周目、12周目、ゴールの獲得ポイントの合計 | 最後にゴールした走者のタイム |
必要な技術 | 長距離を滑るスタミナ | 3人のチームワーク(先頭を担当する周回数や順番を調整する戦術) |
他の選手との駆け引きをする瞬時の判断力 | 空気抵抗や先頭交代による減速ロスを以下に抑えるか | |
ラストスパートのトップスピード | ||
ラストで、最短距離で急カーブを駆け抜ける技術 |
マススタートでは、ポイントの重みから言って、最終16周目での駆け引きで勝負が決まりますので、そこに至る長距離を滑るスタミナ、他の選手との駆け引きをする瞬時の判断力、ラストスパートのトップスピード
や、最短距離で急カーブを駆け抜ける技術が大きなポイントとなってくるわけです。
さらに、各国最大2人出られるので、レースを作ったり、前の選手を追ったりする「アタッカー」、もう1人がアタッカーのサポートを最大限に生かしながら余力を残した状態で最終コーナーおよびストレートでの勝負を挑む「スプリンター」とチームとして役割分担できるという面もあります。

マススタート有名選手
高木奈菜(日本)
何と言っても、1番目に挙げられるのが、初めてマススケートが五輪に採用された平昌オリンピックで、初代女王となった高木奈菜選手でしょう。
平昌オリンピックのマススタートではラストのカーブで内側に切れ込んでの金メダルになったが、「展開を読む能力」「判断力」に加えて、かつて取り組んでいたショートトラックやサッカーの経験を通して培った力が発揮されての金メダルであった。自身はマススタートの金メダルについて「本当に予想通りの展開になってくれて、最後のスプリントで勝つことできた」「自分のスケート人生にとって、かけがえのない日になった」と振り返っている
平昌五輪後も世界距離別選手権で2018年に2位、2020年には4位に入るなど、世界トップレベルを維持し続けています。
イバニー・ブロンディン(カナダ)
2012/2013シーズンの第3回ワールドカップでは、ブロンディンはチームパシュートで優勝した3人のカナダ人女性の1人です。
2014年以降、マススタートに重点を置き、世界距離別選手権2020で優勝しています。
本大会チームパシュートで、日本を破り金メダルを獲得していますので、平昌五輪の高木奈菜と同じ立場で、マススタートに挑むことになります。
キム・ボルム(韓国)
平昌五輪のマススタートで、高木奈菜に次ぐ2位、世界距離別選手権2020でブロンディンにつぐ2位でした。
平昌五輪のチームパシュートでは、銀メダルをえたものの、いじめ問題で、世間から叩かれ、精神的に参っていたようですが、世界距離別選手権の結果から、すっかり立ち直ったようです。
イレーネ・シャウテン(オランダ)
平昌五輪のマススタートで、3位。高木奈菜は、最後に、イレーネ・シャウテンをターゲットに、勝負に出ました。世界距離別選手権2020でキム・ボルムブロンディンにつぐ3位で、高木奈菜の4位を上回りました。
北京五輪では、すでに3000mと5000mで優勝しています。
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まとめ
わかりやすくまとめると
- マススタートのルールと競技としての特徴をまとめ、ゴールでの順位がポイントの大きな要因となることを具体例で示した
- パシュートは3選手による団体競技に対し、マススタートは個人競技であるなど6点の違いを一覧にした
- 高木奈菜の強敵となるマススタート有名選手3名を挙げた

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